ロマンティック街道(Romantischestraße)はネルトリンゲン(Nörtringen)の南東,リース(Ries)盆地の縁に立つ山城。南ドイツでもっとも古くて大きくて,保存状態の良い城の一つです。
団体観光ツアーでは殆ど素通りされてしまうためにあまり知られていないと思いますが,知っていればバスの中から山の上に聳え立つ城が見えると思います。
ツアーで行く方は,それらしいところを通るとき,がんばって見逃さないように山の上の城を探してみてください。
ハールブルク城の歴史は以下ををご覧ください。
ハールブルク城の城主はヴァラーシュタイン城とバルデルン城の城主と同じエッティンゲン・ヴァラーシュタイン侯爵家(Oettingen-Wallerstein)です。エッティンゲン・ヴァラーシュタイン家が所有する他の城については,以下をご覧ください。


ハールブルク城の見どころ
落とし格子に矢狭間,ベルクフリートに設けられた牢獄など,戦闘の多い中世の時代,城を守るための防衛の知恵がそこかしこに見受けられます。
保存状態が良いこともあり,一つ一つに歴史ロマンを感じることができます。
ハールブルク城への行き方
アウトバーン7号線(A7)をローテンブルク(Rothenburg ob der Tauber)で降りてブンデス(Bundes)25号線を南下してロマンティック街道を行くのもよし。
アウトバーン8号線(A8)をアウグスブルク(Augsburg)で降りて,ブンデス(Bundes)2号線を北上,ドナウヴェルト(
交通の便があまり良いところではないのでなかなか良い道が無いのですが,ロマンティック街道をドライブ旅行するのであれば問題はありません。
ハールブルク城の訪問記
目の前に高くそびえ立つ城壁,落し格子。この城を攻めるには,かなり勇気が必要かもしれません。
城の中に入って,とりあえず土産物屋を捜します。土産物屋はすぐに見つかりましたが,なぜかパン屋の看板が付いていました。
昔はパン屋だったそうで,今はパン屋跡が現在は土産物屋になっています。
土産物屋を物色し,ドイツ語の城の本を買ったら,「ここに英語のがあるよ」と親切に教えてくれました。しかし,「私はドイツ語の方が良いです」といってドイツ語のを買いました。日本語の本はないようです。
ツアー開始時刻まで時間があるので,城の中庭を探索します。
仮装している人たちがいました。

ハールブルク城のガイドツアー
ツアーはドイツ語ですが,日本語のツアーガイドの冊子が有料であります。
先ほど本を買うときに,日本語はないのか聞いたのがよかったらしく,気を利かして教えてくれました。ちなみに,イタリア語もありました。
ロマンティック街道のマイナー城ですが,日本人もたまに来るのでしょうか。個人旅行でないとなかなか来れないと思います。
ツアー開始までしばし待つ。
先ほどの仮装していた人達がダンスを始めました。ダンスを見たいけど,残念ながらガイドツアーが始まってしまいます。
カウベルをぶら下げた人の良さそうなドイツおばさんがガイドさんでした。
ツアーが始まると,まずは注意事項の説明から始まります。内部は撮影禁止です。
城の教会に入ります。ガイドさんが説明をします。
「城が出来た当時はまだ食べ物が乏しくみんな飢えていた。・・・」
という説明をした後,ガイドさんは男の子を捕まえて子供向けの説明を始めます。
「昔はね,チョコレートもフライドポテトも無かったのよ。ジャガイモを食べるようになったのはずっと後になってから。スパゲッティだって無い,胡椒も無い。みんな○×粥,□△粥,★◇粥,etc.を食べていたのよ。分かる?」
子供向けの説明をするガイドさんは初めて見ました。子供向けの説明は大人にとってもイメージしやすくていいですね。
「バナナだって無いのよ。それに昔は暖房が無くて冬はとっっっても寒かったのよ」
ガイドさんはちょっとバイエルン訛りが入ってて聞き取りにくいけど,しゃべり口が凄く面白くて隙が無い。
ちなみにガイドさんは,この後の見学もずっと男の子の傍にいました。元気の良い子供を捕まえておけば,展示品を触ったり,いたずらされる危険性は少ないですからね。
ガイドさんは参加者に質問をします。
「生活するのに一番大切なものは何ですか?」
見学者の一人,「水」
「そう,水です。家畜を飼うのにも水がいるし,洗濯するのにも料理をするのにも水が要ります。今は枯れていますが井戸は50mの深さがあります。昔は130mの深さがありました」
ガイドさんはまた男の子に向かって
「ハムスターの回し車って知ってる?井戸から水を汲み上げる時はね,ハムスターの回し車みたいなのがあって,その中に人が入って走ってまわして水を汲み上げていたのよ。」(動作付き)
教会で翼廊を飾ってある像はここの三代にわたるプロテスタントの伯爵夫妻の墓標だそうです。
他にカトリックがどうとかプロテスタントがどうとかいう説明がなされました。宗教戦争の名残でしょうか。
新教か旧教か,それはヨーロッパの歴史にとって重要な出来事です。
教会を出て給水塔(Wasserturm)へ向かう。塔の前で軽く説明。
塔に入ってすぐ階段を上って歩廊を歩く。
階段の下にはガイドさんがいて,
「これが1500年からある木。500年の歳月が経っているの」
と説明をする。
1500年というと,日本の室町時代か。室町時代から城を見てきた木ということか。
歩廊(Whergang)。3種類の矢狭間は15,16世紀に作られたものだそうです。
近くの敵を狙うのと遠くの敵を狙うもの。始めてみるのはボールが付いた矢狭間。ぐりぐりと良く回ります。

ボールの穴に銃身を挿し込んで撃ったらしいです。差さえがあるので,安定して撃てたようです。
大きな矢狭間は,燃えた木をなげたりするのに使ったそうです。その他熱湯,熱い油,タール(Pech:ドイツ語ではとんだ災難のことをPechと言ったりするが,これに由来している)をここから投げます。
その先に紋章入りの楯が掛けてありました。城主とその家来達のものらしいです。
更にその先には,牢獄で囚人の人形が置いてあります。4人まで収容できるそうです。ここは三十年戦争で破壊されてしまいましたが,その後再建されたものらしいです。
そのまま進んで箱型の家(Kastenhaus)に入ると,初めて見る羽ペンがありました。
ガイドさんは羽ペンを持って羽ペンに付いて説明します。
「ガチョウの左の翼から1枚だけ取れます。ここの部分にインクが溜まります」
(使い心地を考えて左の翼を使うのでしょう。左利きの人には右の翼を使うということはあったのでしょうか。疑問が沸き起こります)
この建物は,1階は厩(現在居酒屋),2階は武器庫で3階は裁判所として使われたらしいです。男の子を巻き込んで,鍵についての説明もしていました。
次の部屋には家系図と現在の公爵様一家の家族写真(さすがに品があります)。
「昔はかなり若くして大人になりました。女の子は14歳で大人扱いになりました。」
という説明をガイドさんはしていきます。
その他,時計のからくりとドイツの最初の皇帝,フランク王国のカール大帝(Karl der Große)の絵がありました。
再び外に出て歩廊へ。矢狭間から見る外の景色は,高かった。こんな所,攻める気にはなりません。
盗賊の塔(Diebsturm/昔はBergfried:天守)の前で説明がありました。下の方は丸みを帯びたてぼこぼこした石,上の方は普通に平らな石で上と下で感じが違います。

中へ入ります。もともとは穀物倉庫だったそうです。このような塔の1階部分は敵の侵入を防ぐため,出入り口とういうものはありません。梯子を使って上層階から入り,1階は穀物倉として使うのが普通です。この城の最も古い部分で最初の城になります。
この塔は近世になって牢獄として使われたそうです。
深さ8m,照明無し,窓無し,一日中真っ暗。
想像するだけでかなり酷。今は見学者のために明かりがついています。下を覗くと,やっぱりそれらしい囚人の人形が置いてありました。
再び歩廊に戻り,本館(Palas)に入ります。本館は大広間(Saalbau)のみの見学です。
ヘルメス,アテネ等の説明がありました。テーマは「戦争と平和」。部屋の両側にはそれを示すマースとフリーデの像が描かれていました。
内部の見学は以上で終わり,城の外に出て,見学しなかった他の建物の説明がありました。
以上でガイドツアーは終わました。
ハールブルク城の営業案内
開館時間
2020年4月1日~11月8日
毎日 10:00~17:00
見学はガイドツアーのみ。
参加者が15人ぐらい集まると,ガイドツアーが始まります。