騎士を目指す少年が棋士になるためには、ページ(Page:騎士見習い、小姓)として主君に仕え、修行する必要がありました。
そこで能力を認められれば、20歳ごろに正式な騎士叙任、いわゆる刀礼(Rittershclag)、アコレード(Accolade)を経て、騎士の仲間入りをします。
刀礼は、騎士階級男子の成人式。
初期のころは簡素な刀礼の儀式にすぎませんでした。
騎士になるための儀式には地域差があり、また、時代による違いがあります。
キリスト教会にとって、戦争好きな騎士は頭痛の種。
叙任式は、荒々しい騎士をおとなしくさせるために、キリスト教と結びついた儀式へと変貌します。
騎士になるための儀式にミサが取り入れられ、宗教的に厳粛化していきます。
騎士叙任式の流れ
刀礼はもともと武器を持つことができる自由民男子の権利だったんだけど、いつしか騎士階級への仲間入りの儀式にかわったものだよ。
騎士叙任式はページの男性が騎士階級の仲間入りをするための厳粛な入門の儀式で、フランスで洗練されていきました。
ドイツでは、フランス宮廷で教育を受けたカール四世が神聖ローマ帝国に輸入する形で14世紀になって取り入れられ、広まります。
中世後期、騎士階級になれるのは騎士の家系出身であることが前提条件でした。
貴族の子弟やミニステリアーレが騎士身分を得たのは、戦争の前後や大きな祝宴の際に、集団で行われることが多くありました。
ミンネゼンガーとして有名なウルリッヒ・フォン・リヒテンシュタイン(Ulrih von Lichtenstein)は、主君のオーストリア公の令嬢の婚礼の際に、250名の若者たちと一緒に騎士になっています。
一緒に騎士になった同期たちを「盾仲間」といって、一生変わらぬ友情を結びました。
儀式の日の前夜、騎士になるものは紋章を教会の祭壇の上に置き、騎士になる若者は入浴して身を清めます。その後、祭壇に向かって徹夜で祈りを捧げます。
当初このようなミサはなく、騎士とキリスト教が結びつくようになってこのような儀式が取り入れられました。
ともすれば暴力に訴えがちな乱暴な騎士をおとなしくするために行った、教会の努力の成果。
初期の頃は首に手を当てるだけの刀礼が一般的でした。剣による刀礼はかなりあとになってからです。
男らしさと成熟を確認するもです。
主君自ら見習いであったものに剣をはかせ、盾と槍を授けます。剣帯は騎士の象徴であり、騎士でないものは剣を鞍に固定させるのが一般的でした。
刀礼
主君が騎士になる若者の項を打ちます(刀礼)。
本気で叩く場合もあれば、手で触れるだけでじゅうぶんな場合もあり、時代と地域差が大きかったよ。
刀礼はイギリスで功労者を貴族に列するとき、その者の肩を軽く打つ儀式を行いますが、これはずっと後になって始まったものです。
このとき、騎士になる者は主君に対して願い事をします。不当なものでない限り、たいてい受け入れられました。
宴会とトーナメントが行われるのが通例です。
中世騎士物語の『ニーベルンゲンの歌』でも、ジークフリートが騎士になったとき、盛大なトーナメントと祝賀会が行われています。
騎士叙任式を受けられない者たち
騎士になるためには、武具は自前で用意する必要がありました。
家が貧しく、馬、鎧、武器、従者といった騎士に必要なものを維持する余裕がない者たち……。
貧者は騎士になれないまま、騎士の資格も爵位ももたないページのまま、一生を終えることもありました。
こうした状況を避けるため、父は必要な道具を揃えてくれそうな裕福な騎士(君主)を教育係にしようと努力したよ。
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