城(ブルク)の分類にはいろいろな分類の仕方があります。
ここでは、Friedrich-Wilhelm Krahe著『Burgen des deutschen Mittelalters Grundriss-Lexikon』に紹介されている、立地による分類を紹介します。
立地による城の分類
城砦は、立地に基づいて大きく3つのグループに分けることができます。
- 山城(Hohenburg)
- 平城(Flachenlandburg)
- 岩城(Felsenburg)
です。そして地形の特徴から、更に細かく分類することができます。
ちなみに日本の城は「山城」、「平山城」、「平城」、「水城」、「海城」に分類されるよ。
山城(Hohenburg)
山城のメリット
防御性に優れます。
守備側にとって、山道を攻城兵器を担いで登る敵兵を発見しやすく、上から矢を放つことも楽にできました。
山城のデメリット
山に登るのが大変なのは、今も昔も同じです。
重機のない時代に建築材料を運び入れるのは大変でしたでしょうし、どこかお出かけするにも毎回山を登り降りしなければならない労力が発生します。
最大の欠点は、生活水の確保が困難であるという点です。
雨水を貯水槽に溜めたり、深い深い井戸を掘って水を確保していました。
山城を山の形でさらに細かく分類
山城は、山のどの部分に建っているかで、さらに細かく分類できます。
- 山脚(Bergsporn):三方が急斜面
- 山頂(Gipfel):四方が急斜面
- 山腹(Berghang)
一口に山城と言っても、いろいろあるのね。
山脚に建つ城(Spornburg)
山の稜線が突き出ており、三方が急斜面になっているところ、尾根の突端部や舌状台地をBergspornといい、そのような立地に立つ城をSpornburgと言います。日本語で表現するならば、支脈城となります。半島城と表現している書籍もありました。
攻撃を受けやすい山側に首濠(堀切)を設け、かつては木橋あるいは跳ね橋がかけられていたと思われます。
城砦の約23.7%がこの立地で、代表例としてはライン川沿いに立つネコ城(Burg Katz、正式名称はBurg Neu-Katzenelnbogen)がこの立地になります。
防御性能は、山頂の次に高い優れた城砦です。
山頂(Gipfel)に立つ城
すべての方角が山の急斜面となっており、ひじょうに攻めにくい城砦です。
城砦の約33.3%、つまり1/3がこの立地で建っています。そしてその約10%が、-ベルク(-berg)という名前になっているのも特徴です。
一度も陥落したことのないというライン川沿いに立つマルクスブルク城(Marksburg)がその典型でしょう。
山の斜面から山頂に建つ城を眺めると、とても攻める気にはなりません。
山腹(Berghang)
山側から攻められると一溜まりもないため、城の建設にはあまり適していません。
そのせいか、この立地条件の城は全体の約0.4%しかありません。
多くは、防衛のためよりも川を運行する船から関税を取り立てるために建てられた城なので、防御の脆弱性はそれほど問題視されなかったのかもしれません。
山頂にある城と違い、生活に必要な水の入手はいくぶんか容易になるというメリットもあります。
ライン川沿いのエーレンフェルス城(Burg Ehrenfels)や、観光地として有名なハイデルベルク城(Schloss Heidelberg)がこの立地の代表例です。
平城(Flachenlandburg)
平地ばかりで城を建てるのに適した山がなければ、平地に建てるしかありません。多くは城の周りに水掘を張り巡らせた水城(Wasserburg)となっています。
水面に映る城の姿が美しいものが多いね。
平城のメリット
耕地が近く、移動も楽で、瑞の確保が容易という利点はあります。
平城のデメリット
防御性能が、やはり山城に比べて劣ってしまうという点です。
平城を立地でさらに細かく分類
平城をさらに細かく分類すると、以下の3つになります。
- 島(Insel)
- 平地(Ebene)
- 丘(Hügel)
島(Insel)
湖や池に浮かぶ島や、川の中州に建つ城砦のことです。
平地に建てる城の中では最も防御性能に優れていますが、このような立地で城を建てることができるような地理的条件が揃っているところはなかなかないため非常に少なく、全体の約0.3%しかありません。
-ヴェルト(-wörth)やヴェルダー(-werderで)で終わる名称が多いという特徴があります。
川の中州に立つプファルツグラーフェンシュタイン城(Zonnburg Pfalzgrafenstein)は有名ですね。
平地(Ebene)
城を建てる場所としては好ましくありませんが、山がなければ平地に建てるしかありません。
山が全然ない北ドイツ平原や、ヴェストファーレン地方に多い城砦の形式です。
多くは水城(Wasserburg)の形をとることが多く、周りに水掘りを張り巡らせて敵の侵入を防ぎます。それゆえ、湿地帯、小川の側に建てられています。
上述の島の場合もそうですが、冬でも水が凍らず、多少の日照り続きでも水が枯れないようにしなければならないのが、難しかったといわれています。堰の設備を持っている城砦も多いです。
後に城砦の時代が終わり城館(シュロス:Schloss)の時代になったとき、水城は城館を建てるにはもってこいの立地条件のことが多かったため、簡単にシュロス化されました。
現在、水城または元水城であることが分かっているのは全体の26.7%です。
元々在った城砦の形が分からないほどになってしまっているのも多く、そのようなものも含めると、城砦の30%以上は水城であったと推定されています。
丘(Hügel)
何も無いところに建てるよりかは幾分かマシになります。全体の3.9%がこの立地条件で、山城に分類されることもある丘城です。
人工的に丘をつくって城を建てることもありました。
適当な丘が無くて人工的に丘を作って建てたのをモット(ドイツ語ではMotte)といいますが、そもそも人工的に土を盛って作った丘をモットと呼びます。
日本の城だと平山城に相当するのかなぁ。
岩城(Felsenburgen)
岩城を立地でさらに細かく分類
岩城はさらに2つに細分されます。
- 岩山(Felsen)
- 洞穴(Höhle)
岩山(Felsen)
切り立った岩盤の上に城を立てるのは非常に理想的です。山の頂上に立てるよりも理想的ですが、そのような条件の整った土地は非常にまれであるため、全体の4.2%です。
そのような地形があるのは、シュヴェービッシュアルプ地方(Schwäbischen Alb)やオーバープファルツ地方(Oberpfalz)等、限られた地域になってしまいます。
欠点は2つあり、岩山の頂上の面積が狭くて住居用の面積が確保できないことと、水の確保です。麓に外郭(Vorburg)があることが多かったようです。
洞窟(Höhle)
今までの立地条件はだいたい想像できるけど、洞穴ってなに?
全体の0.4%。チューリンゲン地方(Thüringen)に多いです。
防御はとにかく入り口さえふさげば良く、そして最後は抜け穴から脱出するというもののようです。
最も強固な城で、敵は相手を兵糧攻めする他に手段はありませんでした。
ひぇ~!城というよりも、ただの洞窟に窓を開けたっていう感じにしか見えない…。
中は意外と広く、5階建ての建物を建てることができたようです。
まとめ
侵略者から身を守るための城砦を建てるためには立地が重要です。
しかし最適な立地は必ずしも領地内にあるとは限らず、領地内のベターな立地を工夫してベストな状態の城砦にしようとする努力が見られます。
城の立地に応じて、
- 山城
- 平城
- 岩城
の3つに分けられ、それぞれ地形に応じてさらに分類できます。
平城は防御性能の弱さから、水城となっているものがほとんどです。日本の城でも、平城には水掘が張り巡らせて防御性能を高めていることから、平城における水掘の重要性が理解できます。