外郭は城の一部で、ドイツ語ではフォアブルク(Vorburg)、英語ではベイリー(bailey)と呼ばれる城の部分です。
外郭?あまり聞き慣れない言葉ね。
う~ん、日本の城に強いて例えるなら、二の丸や三の丸といった曲輪が相当するかな?でも用途は、日本の城とは違っているかも。
ここでは、ドイツを始めとするヨーロッパの城の外郭についてみていきます。
外郭・ベイリーとはなにか
外郭は環状囲壁で防備を固めており、内郭とは堀や城壁、門などで隔てられています。
大規模な城砦の場合、複数の外郭があることは珍しいことではありません。
山城の場合
地形を考慮して建設する必要があるため、外郭は内郭よりもやや低い位置にあるのが一般的です。
山城の場合、城の中心部分(内郭:Kernburg)は小高い丘の上にありましたが、そのすぐ近くの少し低いところには、外郭と呼ばれる区域があり、内郭と同様に城壁で囲まれ、城門がありました。
ドイツ語では、フォアブルク(Vorburg:前城砦)の他、ニーダーブルク(Niederburg:低城砦)、ウンターブルク(Unterburg:下城砦)と表現される外郭もあることからわかるように、内郭よりもやや低いところに形成されていることが言葉からもわかります。
山城など、内郭の城域面積が狭い場合、内郭下の谷間や山麓に外郭が設けられることがありました。
水城の場合
外郭は、内郭周りのすぐ近くに、三日月の形でまとまっているのが一般的です。
内郭と外郭の2つのエリアが2つの島に分かれているのが一般的で、外郭の本丸に面した側には、建物がほとんどありません。
外郭の役割
城の経済の中心地として
外郭は、ときに経済ホーフ(Wirtschaftshof)と呼ばれることがあるように、城の経済活動の中心でした。
外郭には、以下のような建物がありました。
- 調理場・パン工房・醸造所
- 家臣や使用人の家
- 職人の工房
- 畑
- 牛舎、厩舎
- 市場
- 貯蔵庫
など
調理場・パン工房・醸造所
調理の際に使用する火は、火災の原因ともなります。
ゆえに、内郭ではなく、可能な限り環状囲壁に近い場所の別の棟に調理場を設けました。
とはいえ、運ぶ途中で冷めてしまったり、雨に濡れてしまったら、せっかくの料理が台無しになってしまいます。別の建物とはいえ、屋根付きの通路でつなぐことがよくありました。
調理場の隣には、流し場とオーブンがありました。
家臣・使用人の家
家臣・使用人の家は、外郭の城壁に沿って建っていました。
使用人たちは、城内の畑や果樹園、森の整備などを主な仕事とし、使用人の妻たちもまた、城主夫人の侍女として仕えていました。
職人の工房
鍛冶屋、大工、石工、皮革職人、ローソク職人たちの工房もここにありました。これらの職業も火を扱うので、内郭とは離れた場所に設置する必要がありました。
常に城のあちこちの修理や、工事の監督をするのが仕事です。
鍛冶屋は、馬に蹄鉄を履かせたり、武器を修理したりするのが主な仕事です。
畑
ささやかながら、ハーブ園や果樹園がありました。
少し大きな城砦になると、池で魚を飼っていたり、鳩小屋や狩猟に使用するハヤブサを飼う檻が壁に設置されていました。
大領主になると、猟師を雇い、猟犬の世話もさせていました。
日々の糧のためにも、籠城戦のときのためにも、城内での食糧生産は重要な仕事でした。
市場
大規模な城では、外郭の中で市場が開かれることがありました。
市場まで開かれるなんて、外郭は小さな村や街みたいね。
防衛施設として
軍事的には、城の前衛施設になります。
内郭への道は、外郭を必ず経由しています。
外郭の存在は、内郭にある城主の邸宅の守備が強化されるだけでなく、防衛バッファーにもなっています。また、かつては周辺住民の避難場所としての役割も担っていました。
城の礼拝堂
周辺住民の避難場所でもあるため、住民たちの教区教会も外郭にあることが多い。
中世以降の外郭の利用状況
中世以降は、馬車小屋、兵士たちの寄宿舎、客人の宿泊施設として利用されるようになりました。
古城ホテルとして
城が古城ホテルとして使用されている場合、客室はたいてい外郭にあります。
う~ん、お姫様気分を味わいたいのなら、やはり外郭ではなく内郭に泊まりたいな。
まとめ
- 外郭とは、城の一部で内郭とは切り離されており、内郭と同じく城壁で囲まれ、城門がある
- 内郭に行くためには外郭を通るしかなく、防衛施設としての役割がある
- 外郭には城で働く人々の家や作業場があり、城の経済活動の中心となっている
外郭の他にも、城を構成する要素はいろいろあるよ!
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