ドイツの城の堀(Burggraben)と日本の城の堀は同じ?違う?

クヴェアフルト城(Burg Querfurt)の空堀

城を防衛するために掘られた障害物としての溝のことを堀と言います。ドイツの城にも、防御力を高めるために日本の城と同じように堀が設けられています。

堀は、城全体をぐるりと取り囲むこともありますが、脆弱な一面のみに堀が設けられていることもあります。

堀は日本の城にもあるから、イメージしやすいね。

うん、ドイツの城の堀も日本の城の堀とほぼ同じ。でもやはり微妙に違うところもあるよ。

堀は、敵が城に近づく際の障害物になっています。

目次

城の堀の役割

敵が、直接城門や城壁に近づくことを防ぎ、防御側を有利にします。堀があると、堀を埋めない限り攻城塔や破壊槌が城に近づけない利点があります。

日本の城の堀も、ドイツの城の堀も目的は同じ。敵の侵攻を防ぐためだよ。

堀の上には木製の橋や跳ね橋が取り付けられ、堀を渡るためにはそれらの橋を通るしかありません。

日本もドイツも、堀を掘ったときに出る土塊や石は、土塁や建築資材として使用されました。

中世以前や初期に発達したドイツの城の堀

ドイツの城を始めとするヨーロッパの城は、石造りの城壁で守っているイメージが強いです。しかし石壁の城になる以前の土と木で守っていた時代、日本の城と同じようにさまざまな技巧を凝らした堀が発展しました。

中世以前や中世初期の城砦には二重、三重の堀が設けられていることが多く、騎馬民族対策であったと考えられています

ローマ軍の砦は、二重の空堀で囲まれていました。

中世以前に発展していたヨーロッパの堀。石壁の時代になると複雑な堀はあまりみられなくなってしまいました。

だから、堀ではなく壁で守るイメージが強いのか

堀の分類

ヴェルトハイム城(Burg Wertheim)の堀切
ヴェルトハイム城(Burg Wertheim)の堀切
Anaconda74, CC0, via Wikimedia Commons

敵の侵入を防ぐために、堀の形もさまざまに工夫をこらします。

水の有無による分類

空堀(Trockengraben)

ブロイベルク城(Burg Breuberg)の空堀
ブロイベルク城(Burg Breuberg)の空堀
Matthias Nonnenmacher, CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0, via Wikimedia Commons

堀の種類で最も多いのが、水が張られていない空堀です。

堀の深さは、一般的に3m~10mくらいです。堀に入り込んだ敵を、防御側は城壁の上から容易に狙い撃ちできました。

空堀は、壁面が急勾配で深いほど効果的です。また、堀の底に、先端の尖った杭を打ち込むことによって、より効果的に敵兵の進攻を妨げることもできました。

かつては深い堀だったとしても、現在は浸食や埋め立てによって、現存する堀は中世時代よりも浅くなってしまっているのがほとんどです。

堀に降りて城を眺めると、高い城壁がさらに高くなり、ものすごく脅威を感じることがわかるから、一度体験してみるといいよ。

水堀・水濠(Wassergraben)

ヴィシェリング城(Burg Vischring)
ヴィシェリング城(Burg Vischring)
Dietmar Rabich / Wikimedia Commons / “Lüdinghausen, Burg Vischering — 2013 — 0297” / CC BY-SA 4.0

当たり前のことですが、水掘は、低地にある城にしか見られません。

近くにある池、あるいは川や小川から水を引き、利用していました。

この水が淀んでしまうと、病気の発生源となるなど生活の質が低下してしまうため、水が停滞せず流れるように工夫していました。また、平時は水を抜き、有事にのみ水を張る場合もありました。

湿地帯自体が敵の進行そのものを妨げるため、あえて湿地帯に建てられた城もありました。城付近は湿地化を防ぐため、やはり水が停滞しないように、堀と運河をつなげて水が流れるようにしていました。

水掘は、平時は水運としても利用でき、敵に地下トンネルを掘らせないというメリットがあります。(地下トンネルは、城壁の下に空隙を造ることによって城壁を破壊する攻城方法です。)

水掘は幅が広いほど効果的でした。

水面に映る城の姿は美しいよね。

堀の場所による分類

環濠(Ringgraben)

城全体を環状に取り囲む堀で、低地の城によく見られます。

首壕・堀切(Halsgraben)

ネコ城(Burg Katz)プルン城(Burg Prunn)といった支脈城によく見られる堀で、山側に尾根を横切るように深い空堀が掘られています。

谷川は急斜面、もしくは断崖絶壁であるため堀は必要ありませんが、山側は城の弱点となるため、堀切が掘られていました。

日本の戦国時代の城には、二重三重の堀切が見られるよ。

区画堀(Abschnitzgraben)

内郭と外郭など、城域を部分部分に区分けする堀です。

横堀(Hanggraben)

山城で、急峻ではない部分に掘られた堀で、山の等高線に沿って掘られた堀のことを指します。城を囲むようにぐるりと一周することもありました。

日本の城で城の周りに沿って掘られる横堀があるけど、Hanggrabenは等高線に沿って掘られるので、ちょっと違う気がするんだよね。

門前堀(Torgraben)

城門の前にある堀のことを指します。

城門の前にある堀には、橋や跳ね橋がかけられており、ここを通って城門へと行くことができました。

多くの場合、環濠や堀切などがこの機能を担っていますが、それとは別に設けられることもあります。

堀の形による分類

薬研堀(Spitzgraben)

堀の中に立つことが困難なほど、くさび形に尖った断面図を持つ堀のことです。

毛抜堀・箱堀(Sohlgraben)

堀の底がフラットまたはU字型の丸みを持つ堀のことです。

日本の城では、底がV字のものを毛抜堀、フラットのものを箱堀といい、さらに細かく分類されているよ。

まとめ

  • 堀は敵が城に近づけないようにするために障害物
  • 山城には空堀、低地の城には水掘がある
    • 空堀は壁面が急勾配で深いほど効果的
    • 水掘は幅が広いほど効果的

日本の城の堀とほとんど同じだけど、細かく見ていくとほんのちょっとだけ違いがあるのか。

堀の他にも、城を構成する要素はいろいろあるよ!

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