マルクスブルク城(Marksburg)の名前の由来伝説

Marksburg

ライン川右岸,ブラウバッハの粘板岩の岩山の上に立つ山城です。一度も廃墟になることなく,近世のロマン主義による改築もされず,中世の姿を今に留める城です。二重の城壁を持ち,四角柱の上に円柱が乗った形の細長いベルクフリートがあります。

このお城には,名前の由来となった伝説があります。

関連:マルクスブルク城(Marksburg)―ドイツ城郭協会本部

目次

マルクスブルクの名前の由来となった物語

娘の恋物語

エプシュタイン(Eppstein)家にはエリザベート(Elithabeth)という名の類稀なる美しい娘がおりました。

美しい娘のもとには,当然,多くの求婚者がやってきます。

しかしその誰もが,エリザベートに受け入れられることなく,トボトボと城を去っていきました。

ただ一人,ジークベルト・フォン・ラーンエック(Siegbert von Lahneck)が彼女の心を射止めました。ラブラブな二人は,明るい未来を夢見てラブラブな計画を立てていました。

別れは突然に

ところがその頃,皇帝ルドルフ・フォン・ハプスブルク(Ludolf von Habsburg)はボヘミアのオタカル王との戦争に,封建領主や騎士たちを召集します。

ジークベルトとエリザベートは結婚式の準備中でしたが,ジークベルトは戦争に駆り出されることになりました。

戦いは長引きました。

マルヒフェルトの戦いでオタカル王が戦士し,皇帝軍の勝利で終わりました。

しかし,戦いは終わってもジークベルトは帰ってきませんでした。帰国した封建領主や騎士の中に,彼の姿を見ることはありませんでした。

彼女は悲しみに明け暮れます。

黒騎士

1年後,黒い甲冑を身にまとった騎士がエプシュタイン家を訪れます。

ロックス・フォン・アンデックス(Rocks von Andecks)と名乗るその男は,ジークベルトの従兄弟で,ジークベルトの遺産を相続したばかりでなく,エリザベートをも欲しがりました。

ロックスは資産こそありましたが,エリザベートへの愛情があるようには思えませんでした。

エリザベートは彼の欲望に煮えたぎったその目と,横柄な態度に心を開くことなんてできません。

修道士マルクス

その少し前にこと,若い僧侶がブルンホーフェン修道院(Kloster Bornhofen)から派遣されてきました。彼は守護聖人マルクスにちなんで,ブルーダー・マルクス(Bruder Markus:マルクス兄さん)と呼ばれていました。

この城の礼拝堂は守護聖人マルクスを祀っていました。

エリザベートは,ロックスに言い寄られた日,修道士マルクスに相談しました。

エリザベートは多くを語りませんでしたが,ジークベルトを警戒していることは分かりました。

マルクスから見て,ジークベルトの陰鬱な男らしさは,城の乙女ほど魅力的なものではありません。

黒騎士への嫌悪感は,増すばかりです。

結婚式

守護聖人

エリザベートは父からの勧めもあって,心ならずもその黒騎士との結婚を決め,結婚式の日取りまで決まってしまいました。

結婚式前夜,修道士マルクスは城の礼拝堂で守護聖人に跪き,エリザベートの幸福と救いを求めました。

マルクスは,エリザベートの命が危険にさらされている気がしてなりません。

自分ひとりの力では,彼女を救うことができないことなんて,マルクスは分かっていました。

深夜,城では客人たちが明日の結婚式を期待してドンちゃん騒ぎをしている中,エリザベートの告白を受けたマルクスは城の礼拝堂で無力な自分を嘆き,エリザベートの真実の愛と幸せを心から神に祈っていました。

すると突然礼拝堂の中が明るく輝き,守護聖人が現れました。

「あなたは純粋な心で私に助けを求めました。悪に対抗し,保護を求めてきた乙女を救いなさい!ロフス・フォン・アンデックスという男は,闇の王子です!この聖なる十字架で,彼に触れなさい!」

そう言って,聖人は消えました。

結婚式当日

花婿がエリザベート・フォン・エプシュタインと結婚するために,修道士マルクスの前に歩み出ました。

修道士マルクースは昨晩現れた守護聖人に言われた通り,花婿のロックスの胸に十字架を押し付け,地獄の三重唱を叫びました。

その時,客人たち全員の目の前で地面が裂け,ロックスを飲み込んでいきました。

とうぜん,これを見た花嫁と客人は恐怖におののきます。

エリザベートは2回めの運命の衝撃から立ち直ることができず,修道院に入り,程なくして亡くなってしまいました。

しかし城の方は守護聖人マルクスに敬意を表し,後にマルクスブルクと呼ばれるようになりました

守護聖人マルクスは,結局エリザベートを救えていないように見えるのは,きっと私だけではないはず……。マルクスが嫉妬しているだけにもみえる…。

エリザベートが浮かばれなさすぎて,可哀想過ぎる…。

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