城(ブルク)の最も重要な役割は,野盗や外国の軍隊から身を守ることでした。
中世ヨーロッパの貴族たちは,何かあるとすぐフェーデを行い,フェーデの攻撃対象は常に敵の権力の中心である城でした。
防衛側の城は守りやすいように,天然の地形を最大限利用できるように立地条件を検討した上で,最適な場所選ばれて建設されています。
陥落しにくいように,巧みに設計されていました。
城をめぐる攻防戦は,基本的に包囲戦となり,防御側が有利だったと言われています。
防御側の態勢
食料品等の物資の準備
稀に籠城戦は1年以上も続くこともありました。
敵軍が到着する前に,食料や水,兵器を含む準備が十分に調達することができれば,戦いはすでに半分終わったとも言えます。
敵の火矢から城の延焼を守るために,動物の皮等で被膜を作成し,燃えやすい施設を覆いました。そして乾燥しないように,定期的に水をかけて濡らしていました。
パーツごとに保管されていた武器の錆を落とし,油を塗り,カタパルトなどを組み立てます。
攻撃に使用する石,ピッチ,矢を十分に揃えておきます。
環状城壁
最も重要な防御設備は,環状城壁になります。
環状城壁には矢狭間と呼ばれる穴が開けられており,城壁で自身を守りながら,広い角度で弓矢や石弓で敵を射抜くことができるようになっていました。
胸壁と歩廊
城壁の上部には胸壁(Brustwehr)のある歩廊(Wehrgang)がありました。
壁の上部にある凸凹を胸壁といい,防御側はそこに見を隠しながら攻撃側を狙い撃ちします。凸部に矢狭間が設けられていることもあり,矢狭間のある胸壁を狭間胸壁といいます。
張り出し歩廊の床には穴が空いており,そこから城壁をのぼってくる兵士めがけて石や熱い油やゴミ等を投げつけます
城門
跳ね橋
城門は通常,堀で隔てられており,跳ね橋がかけられていました。
戦いが始まると,跳ね橋を引き上げ,通行を遮断します。その後は取外し可能な狭い側橋だけがかかっており,城内へは一人ずつしか入れないようになっていました。
落とし格子
門番がいつでも落とし格子を落とせるようになっており,門を施錠できるようになっていました。
攻撃側の態勢
城に突入することは難しかったため,攻撃は基本的に奇襲攻撃でした。
しかし奇襲攻撃が成功するのは,敵に賄賂を贈り,門を開けておくようにさせることに成功した場合に限られていました。
城が奪還できなかった場合,包囲戦が始まります。
包囲戦
城の住人たちを飢えさせるため,まずは城を直接攻撃するのではなく,周囲の農場に火を放ち,すべての物資の供給ルートを断ち切ります。
供給ルートを断ち切る一方で,どうやって攻城兵器を城に接近させるのが良いか考えました。
攻城兵器
山城に攻城兵器を運ぶのは大変でした。
兵器を解体し,牛舎で運ぶのですが,急峻で曲がりくねった山道をのぼっていく途中,ゴロゴロと音を立てたものなら,すぐさま防衛軍から矢の雨を受けることになります。
堀も障害になりました。
堀はその辺の土や木の束,石で堀を埋めました。
防衛側にばれないように真夜中に作業が行われました。見つかったらすぐに,石や熱いピッチが飛んできてしまいます。
破壊槌
破壊槌という攻城兵器は,移動式のフレームに,巨大な木の丸太を鎖で吊るしたものです。木の幹の先端は金属が取り付けられていました。
城から放たれる火矢から守るために,濡れた動物の皮で覆った木の屋根を取り付けていました。
破壊槌で門や壁を壊すために,丸太を前後に大きく揺さぶって破壊します。
カタパルト
航空母艦のカタパルトではありません。木製の投擲機のことです。
ロープに取り付けられた投擲腕を,兵士がウインチを使って引き下げ,その先端に石,ゴミ,死んだ動物,悪臭のする液体などをセットします。
火鍋を飛ばすこともあります。消火が困難なように,硫黄や樹脂,ピッチや油などが混ぜられていました。
腕の反対側にはカウンターウェイトが取り付けられており,ロープを開放すると,勢いよくものが飛んでいきます。
トンネル堀
地形が適しているところで,包囲戦が何週間も続くような場合,攻撃側は城壁の下にトンネルを掘ります。
トンネルは木材の支柱で支えながら掘り進めます。
壁の基礎に穴を開けることができたら,木材に火をつけ,上の城壁が崩れ落ちることを期待します。
突撃
地下トンネルに火を放ち,破壊槌が一斉に何箇所かで上下機を開始し,カタパルトは連射を始めます。
弓兵や,城壁の飢えで動くものは何でも射抜こうとします。
ここで攻城塔(Belagerungsturm)が登場します。攻城塔は城壁よりも高く作製されます。
攻城塔に攻撃が集中してしまうのを防ぐため,攻城梯子を設置して,防御側の注意をそらします。
戦争終結
防御側が降伏する前に城を奪うことができたのなら,攻撃側は何の慈悲もあたえません。
防御側の食料が乏しくなったり,優劣がはっきりしてきたり,救援の見込みがなかったり,病気で城の住人が弱ったりすると,降伏交渉が行われました。
無条件降伏はめったにありません。
勝者は敗者の名誉と財産の一部を残し,しばし条約で縛り付けることもしました。
また,攻撃側は守備側が長く持ちこたえられることに気づいたときや,攻撃を続けることよりも冬の寒さと雪による犠牲者のほうが多いと判断した時,退却していくこともありました。
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