雲海の上にそびえ立つ「天空の城」として、日本でも人気のホーエンツォレルン城。
晴れた日の凛とした美しさ、霧に包まれた幻想的な姿、そして曇天の日の妖しげな雰囲気——天気によってまったく違う表情を見せてくれます。
城山塔子私が訪れた日は曇り空。コウモリが似合いそうな、どこか怪しげな城にしか見えなかったよ。それもこの城の魅力の一つだけどね。
ホーエンツォレルン城は、後にプロイセン王家となりドイツ皇帝を輩出したホーエンツォレルン(Hohenzollern)家発祥の地。一つの貴族家系がドイツ皇帝にまで成り上がっていく歴史の出発点です。
ホーエンツォレルン城は11世紀立てられた初代の城、破壊後15世紀に建てられた2代目の城、そして現在の3代目の城は19世紀に新ゴシック様式で再建されたもので、中世の城の面影はほとんど残っていません。
本記事では、名門ホーエンツォレルン家象徴の城となっているホーエンツォレルン城の見どころを紹介します。
ホーエンツォレルン城の歴史については、詳しくはこちらをご覧ください。


城へのアプローチ
駐車場から城まで徒歩約15分。かなりの急斜面を登り、入場料を払って中に入ります。
入場料を払って中に入ります。
アドラー門(Adlertor)から続く螺旋坂道


入場口のアドラー門から城の中庭の門塔まで、約25mの高低差があります。
この高低差を解消するために作られた螺旋状の坂道は、19世紀の要塞建築の傑作と言われており、攻めにくく守りやすい構造になっています。
この螺旋坂道は見どころの一つ。
4回転しながら登る道は訪れる人を驚かせ、歩いているだけでも楽しい、不思議な感じがする坂道です。
城内の見どころ(ガイドツアー)
城内はガイドツアーのみで見学可能。城内は撮影禁止です。
この城は実際に長く住まれていた城というより、 ホーエンツォレルン家の歴史や権威を示すための城という側面が強く、 同じホーエンツォレルン家のジグマリンゲン城と比べると生活感はあまりありません。
ジグマリンゲン城については、詳しくはこちらの記事をご覧ください。


家系図の間(Stammbaumhalle)


最初に案内されるのは、壁一面にホーエンツォレルン家の巨大な家系図が描かれた部屋。
一族の長い歴史を一目で辿ることができるようになっています。
ガイドさんが家系図を指しながら、歴代の王や皇帝を解説してくれます。
シュヴァーベン系は赤い円、フランケン・ブランデンブルク・プロイセン系の人物は紺色の円で描かれ、名前と日付が記されています。
ツォレルン家は「フリードリヒ」という名前が大好き。父がフリードリヒなら、息子3人ともフリードリヒ……なんてことも珍しくありません。



同じ名前が多すぎて、ドイツ人でさえ混乱するんじゃないかと思ってます。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hohenzollern_Genealogy.PNG
さらに称号が変わると番号が振り直されるため、ドイツ史を難しくしている原因の一つとも言われています。
ちなみに、この部屋の壁は石積みに見えますが、実は石の絵が描いてあるだけの騙し絵の技法。
中世の城の雰囲気を演出するための装飾で、ホーエンツォレルン城が19世紀に建てられた城であることがよく分かります。
王侯貴族は、自分の家系を古代の王朝、できればフランク王やカール大帝にまで遡ろうと試みました。
当時のロマン主義的な精神に基づき、家系の名声を高めるために、必ずしも歴史的に証明されていない伝承(シュタウフェン家との繋がりなど)も含まれています。



信憑性の怪しいところもあるらしいけど、そこは問題じゃないらしい。
この先は靴の上から巨大スリッパを履いて中を見学します。
伯爵の間(Grafensaal)


伯爵の間は、祝宴を開くための大広間です。
赤い大理石の柱、ネオゴシック様式の尖頭アーチ型のヴォールト天井、金色の装飾が見事。6つのシャンデリアも金メッキが施されており、祝祭時にはロウソクがともされます。
暖炉が2つと、ホーエンツォレルン家の4人の肖像画が飾られています。
現在も家族の祝賀会場として使用されているそうです。
皇帝の塔(Kaiserturm)
皇帝の塔は、15世紀に建設された2代目の城の再建を許可した神聖ローマ皇帝フリードリヒ3世への敬意を評して名付けられました。
その名称と位置は現在の3代目の塔にも受け継がれ、皇帝の間と呼ばれるその内部は現在、歴代ドイツ皇帝(ヴィルヘルム1世、フリードリヒ3世、ヴィルヘルム2世)の胸像が飾られています。



まさに皇帝の塔ね。
図書室(Bibliothek)
壁一面に本棚が並び、重厚な木製の家具が置かれた、落ち着いた雰囲気の部屋。
中世の城の図書室というより、19世紀の貴族の書斎といった印象を受けます。
ホーエンツォレルン家の伝説を描いた見事な壁画が飾られています。
図書室もまた、王家の歴史や文化、家系の研究を象徴する部屋の一つだったのでしょう。
王妃の広間(青のサロン:Blauer Salon)


王妃の居室・応対室として使用された広間であり、その豪華な内装から「青のサロン」と呼ばれています。
ホーエンツォレルン城は実際の居城というよりも、 プロイセン王家・ホーエンツォレルン家の栄光を示す象徴的な城ですが、 それでも王族が滞在するための部屋が用意されていました。
青い壁布と家具で統一され、金色の装飾が施された優雅な部屋。



ホーエンツォレルン城が中世の城ではなく、19世紀に建てられたロマン主義の城であることがよく分かります。
19世紀ヨーロッパでは、青は高貴・気品・王家を象徴する色でした。
特にプロイセン王国では、「プロイセンブルー(Prussian Blue)」という顔料が有名で、王家・軍・国家の色として広く使われていました。
そのため王妃の部屋が青で統一されているのは、単なる装飾ではなく、王家の象徴色という意味もあります。
宝物庫(Schatzkammer)




城内のハイライト。かつての厨房を改造した空間に、貴重な品々が展示されています。
ダイヤモンドやサファイアで飾られたプロイセン王冠や、フリードリヒ大王の命を救ったとされる弾痕の残る嗅ぎタバコ入れなどの貴重な品々が展示されています
最後の宝物庫は、小さな控えの間を通って入ります。パレードメイルがあり、王冠がありました。ささやかながら、中世に遡る鎧や武器のコレクションがあります。
宝物庫の展示品の中でも重要なのが、 プロイセン王家ゆかりの品々。
王冠や王笏、儀式用の武器、中世の鎧、金銀の食器など、ホーエンツォレルン家ゆかりの品々が展示されています。
城の周囲の見どころ
ホーエンツォレルン城の見どころは、内部だけではありません。
城にはカトリックとプロテスタント、ロシア正教の3つの礼拝堂、歴代当主の銅像はもちろんのこと、山城ならではの絶景パノラマを楽しむことができます。
複数の礼拝堂
ホーエンツォレルン城は、カトリックのシュヴァーベン系のための聖ミヒャエル礼拝堂、プロテスタントのプロイセン系のためのキリスト礼拝堂がそれぞれ城内にあります。
それだけでなく、キリスト礼拝堂のしたには、ルイ・フェルディナントが妻キーラのために整えたロシア正教の復活礼拝堂まであり、ここにはルイ・フェルディナント夫妻が埋葬されています。



人はそれぞれ自分の好きなように救われてよい
聖ミヒャエル礼拝堂(Michaelskapelle)


カトリックの聖ミヒャエル礼拝堂は、2代目の城の時代から存在するホーエンツォレルン城の中で最古の建物です。
身廊と聖歌隊席は15世紀のゴシック様式。その他は19世紀の増築ですが、新旧の区別がつかないほど巧みに設計されています。
この礼拝堂のステンドグラスは、南西ドイツで最も美しいとされています。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Burg_Hohenzollern_(29).jpg
キリスト礼拝堂(Christuskapelle)
19世紀に現在の「3代目の城」が建設された際、当時のプロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世の命によって建てられたプロテスタントの礼拝堂。
敬虔なプロテスタント信者であったヴィルヘルム4世が、自身の信仰のために建設しました。
見学は自由です。
ここには、第二次世界大戦の戦火を避けるために、フリードリヒ大王とその父フリードリヒ・ヴィルヘルム1世(軍隊王)の棺が、ポツダムから運び込まれました。
1991年8月、2人の王はポツダムへと帰っていきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hohenzollern-Christuskapelle105733.jpg


歴代当主の銅像
城の周囲には歴代当主の銅像が建てられています。



個人的に一番目を引いたのは……立派なビール腹でした(そこ?)


ホーエンツォレルン城からの眺め


訪問日は曇りでいまいちでしたが、晴れた日には素晴らしい眺望が楽しめます。
山城ならではのパノラマビューは、見どころのひとつです。
美しいホーエンツォレルン城をお手元に
ホーエンツォレルン城へのアクセス
山の麓に駐車場があります。
シャトルバスを利用するのもいいですが、駐車場から歩いて城までいくのは、山城の楽しみ方の一つ。
公共交通機関を利用する場合
公共交通機関を利用するなら、ヘッヒンゲン(Hechingen)駅から城の駐車場までバスが運行しています(夏季のみ)。
時刻表は、ホーエンツォレルン城の公式サイトで確認してください。
ホーエンツォレルン城公式サイト
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まとめ
ホーエンツォレルン城は、ドイツ皇帝を輩出したホーエンツォレルン家の発祥の城。
現在の城は19世紀の再建ですが、新ゴシック様式の美しい外観と、ガイドツアーで巡る豪華な内装が見どころです。
天気によって表情を変える「天空の城」、ぜひ一度訪れてみてください。












