リメス

ローマ帝国時代の防砦システムであり、同時にローマ領の境界線を示すものです。

「リメス」はラテン語で「境界」を意味し、英語の「Limit」の語源にもなっています。もともとは土地分割の境界線となる単なる道路を指す言葉でしたが、ローマ軍の遠征活動に伴い、軍隊が切り開いた軍道を指すようになりました。

そして、帝国の北方や西方など、敵対する蛮族の侵入を防ぐために、木柵、土塁、砦、石壁などを組み合わせた大規模な防壁として整備されるようになったのです。

ローマ帝国全土に張り巡らされていましたが、特に有名なのがドイツに残る「オーバーゲルマニッシュ=レティシャー・リメス」です。このリメスは、ライン川とドナウ川の間の約550kmにわたって築かれており、2005年にはUNESCO世界遺産に登録されています。

単なる軍事施設ではなく、道路や集落、神殿なども整備され、帝国の文化や社会が色濃く反映された場所でもありました。また、交易や外交の拠点としても機能し、ローマ帝国と周辺地域との交流を促進していました。

しかし、5世紀になると、ローマ帝国の衰退とともにリメスも維持できなくなり、蛮族の侵入によって多くの箇所が破壊されました。現在でも、リメスの遺構は各地に残されており、当時のローマ帝国の様子を今に伝える貴重な遺跡となっています。

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